SMoLE’s blog

SMoLEマンション管理士事務所 所長のブログです。

有言実行と不言実行

「不言実行」とはあれこれ言わず、黙ってなすべきことを実行することです。 

昔からある四字熟語で、余計なことを言わないで黙ってやるのが良いことだと私も教わりました。 

 

それに対して「有言実行」とは、口に出したことを必ず実行することです。 

この言葉は、「不言実行」から派生して近年言われるようになった四字熟語です。 

 

「不言実行」と「有言実行」のどちらのほうが良いのかということがビジネス書などにもよく話題とされています。 

どちらがかっこいいかという観点や、どちらが成功するかという観点で語られたりもします。 

 

どちらがかっこいいかというと、「宣言して実行することは難しい、言わないのはできないときのための逃げ道に感じる」とする有言実行派と 

「わざわざアピールされるより黙ってやるほうが好感が持てる」とする不言実行派に分かれます。 

 

どちらが成功するかという場合は、有言実行派が最近のビジネスマンに支持が多いです。 

理由として、周りに宣言してしまえば、実行できないと恥をかくことになり、あえてそのプレッシャーにより自分を追い込んで実行せざるを得なくなる、

また、周りの人に助けられたり、励まされたりして、結果的に実行しやすくなると考えられるからです。 

逆に、「マイペースが良い、過度のプレッシャーには耐えられない」という不言実行派もいるようです。 

 

これらについて私の意見はどうかというと、正直「どちらでもいい」と思います。 

何故かというと、これらは結局、自分がどうみられるのかや自分の成功のためにどっちが良いのかという観点で語られているからです。 

個人的な問題に関する限り、どちらが良い結果を生むかは、その人の性格や周りの環境によるとしか言いようがないでしょう。 

 

 

さて、今回私がこの話題を選んだのは上述とは異なる観点から語りたいと思ったからです。 

 

それは、管理組合の運営のように他人と協働して課題に取り組む場合に、不言実行と有言実行のどちらが良いのかということです。 

 

この点からいえば、完全に有言実行が良いと断言できます。 

逆に不言実行は非常に悪い結果を生むことになります。 

 

確かに管理組合運営のように、上下関係のない多数の組合員の意見を一つにまとめて実行に移すことは非常に困難です。 

 

特に複数の選択肢があって、利害者の意見集約に困難が予想されるような場合、 

例えばある程度の費用が掛かる修繕工事の検討は、理事会で施工方法検討や業者の相見積取得をして意見を一つにまとめるのに時間と労力が必要となります。 

 

もし仮に決定権限を持つ理事長が早く修繕したいため、誰にも言わないで独断で工事の内容を決定し実行してしまったとしたらどうなるでしょうか。 

 

決定に際し十分情報収集して費用の安い方法を選び、特に完了後のトラブルも発生しなかったとしても、 

事前の説明抜きでは理事長は他の理事や組合員から批判にさらされる可能性が高いでしょう。 

 

どんなに良いことだと自分では思っても、事前に周囲に言わないでやることは、 

協力すべき仲間を無視する独善的態度であると考えられてしまうのです。 

 

そして、残念なことに、非常にやる気のある管理組合の理事長ほど、 

組合のためと思ってやるうちに、つい一人で突っ走ってしまい、 

結果的に孤立し批判されて挫折してしまうことも多いのです。 

 

 

これは、理事長個人だけでなく理事会にも言えることです。 

組合員に対して、理事会が行っている細かい日常業務まで報告する義務はありませんが、 

組合全体にかかわる重要な問題が発生した場合などは、緊急時を除き

組合員に対し必ず事前に対応について説明を行わなければなりません。 

 

 

それが、組合員に対して、あらかじめ問題を隠さず明らかにし(見える化)、 

問題を全員で共有し、自ら判断し実行する

という協働型の組織である管理組合のあるべき姿であり、成功へ導くためのキーポイントだからです。 

 

 

ともかく、自分にかかわる重大な利害が自分の知らないところで他人に勝手に決められたと思ったら、気分がいい人はいないでしょう。 

その意味で協働組織においては、不意打ちとならぬよう、必ず「有言実行」を心掛けたいものです。